RX GAKUEN

CASE STUDY導入事例

GAKUENシリーズを導入いただいた大学様の声をご紹介しています。

桃山学院大学様導入事例

高等教育への接続を意識した入学前教育プログラムの開発~UNIPAクラスプロファイル活用~
~10,000名
学生サービス
教育支援・改善
オンライン授業
2023.01.10
桃山学院大学

桃山学院大学

大学紹介

 桃山学院大学様は1959年に開学した、大阪府内で最も歴史のあるキリスト教私学のひとつです。「キリスト教精神に基づく世界の市民の養成」を建学の精神とし、「キリスト教精神に基づく人格の陶治と世界の市民として広く国際的に活躍し得る人材の養成」を教育理念として掲げられています。現在は、6学部7学科と大学院4研究科に加え、総合研究所も有されており、教育ビジョンである「地域で、世界で、人を支える」人材の育成に注力されています。

 今回は、大学統括部 共通教育機構事務課 課長補佐 高良様に当社のシステムを活用した入学前教育プログラムについて伺いました。

 


 

 導入済みプロダクト

 

  UNIVERSAL PASSPORT RX1.0

Base, 教務, 教室, 授業, 出欠管理, スマホ出席, アプリ

 

取り組みの目的・経緯を教えてください。

 本学では2020年度までの入学前教育として、推薦入試合格者のみを対象に外部業者によって提供されるオンラインでの学習コンテンツや、複数日の通学プログラムを提供していました。内容はリメディアル教育が中心で、作文添削や基礎的な英語、数学等の復習を行っていました。この従来の入学前教育のあり方に対して、学内では「推薦入試の学生のみを対象にするのはなぜか?」「入学前教育の目的はなにか?」「入学前教育はどのような効果をもたらすのか?」といった様々な疑問が生じていました。

 

 そんな中、新型コロナウイルス感染症の拡大が、入学前教育のあり方を考え直す機会となりました。対面による入学前教育は断念することとなり、入学後も遠隔授業を実施せざるを得なくなりました。対面でのオリエンテーション等も中止となる中で、学生は問題なく履修登録を行えるのか、UNIVERSAL PASSPORT(以下、UNIPA)の機能を十分に利用して遠隔授業を受講できるのかという現実的な問題に直面しました。そこで2021年度からは、入学前教育の対象学生を入学予定者全員に拡大し、プログラム内容も変更することとなりました。従来のリメディアル教育中心の内容から、オリエンテーションで実施している内容の提供や、UNIPAを利用した遠隔授業の受講準備に関する情報提供、また、より実践的な学習スキルが身につくような内容に変更し、教材を用意しました。

取り組み事例を教えてください。

 2022年度の入学前教育では、2021年度のプログラムを踏襲しつつ、コロナ禍で突貫的に作った部分をより洗練させました。そして、入学後に学生が利用するであろうUNIPAの様々な機能をフル活用できるような内容に再編しました。対象学生は入学予定者全員とし、実施期間を1月中旬から5月末としました。これは、年内の入試に合格した学生はできるだけ早く、後期入試合格者や追加合格者は入学後もプログラムを受講できるようにするためです。実施形態としては、UNIPAのクラスプロファイル機能を利用したオンデマンドプログラムを中心としつつ、学生が大学のキャンパスを少しでも体感できるように任意の対面プログラムも用意しました。実施体制については、教材の準備やLMSの設定を私を含む職員が担当し、運営支援を学習支援センターの教員と学生スタッフが担当しました。特に学生スタッフの活躍は目覚ましく、対面プログラムにおけるワークショップの企画や、課題の採点・フィードバックを担ってくれました。

 

 

 

 

 1月中旬から入学前教育プログラムを実施していることを先述しましたが、そのためには、同時期に入学予定者がUNIPAにログインする必要があります。UNIPAへのログインに学籍番号が必要であることから、学籍番号をどのタイミングで付与するかについては、学内で調整が必要でした。2020年度までは、全入学者のリストが揃ってから氏名の五十音順に学籍番号を付与していました。しかし、可能な限り早く入学前教育プログラムを受講してほしいという思いから、関連所管と調整し、1月初旬、2月初旬、3月初旬、3月下旬の計4回に分けて学籍番号を付与する制度に変更しました。そのため学籍番号は氏名の五十音順ではありませんが、本学の運用上では問題ないと考えています。

 

 

 次に具体的な入学前教育プログラム受講の流れをご紹介します。入学手続きが完了した学生に、新入生サイトで学籍番号とパスワード、UNIPAへの初回ログインに関する案内を行います。UNIPAへログインした学生は「掲示」に掲載されているリンクから、入学前教育プログラムの説明動画を視聴してもらいます。その後、プログラム受講にあたっての事前アンケートに回答してもらい、プログラム受講へと進みます。2022年度は、以下の通り、第1回から第7回までのコース学習を用意しました。各コースには学習目標が設定されており、UNIPAクラスプロファイルのテスト機能や課題提出機能を活用したプログラムとなっています。

 

 

 

 

 なお、提出された課題に対しては、学習支援センターの学生スタッフに提出課題の閲覧と返信の権限を与え、フィードバックを行ってもらいました。オンデマンドのプログラムでは、ひとりで課題に取り組まなければいけません。だからこそ、少しでも大学とのつながりを意識してもらいたいと考え、このようなフィードバックを実施しました。

 

 本学の入学前教育プログラムは、大学生活での実践的な内容を一通り網羅しています。入学前教育プログラムの目的は「大学生になる」ことにあると考えており、学生が大学生活で必要となる学習スキルについて学び、また、必要な情報を入手することで、大学生としてのイメージを持ってもらうことをねらいとしています。そして、自立と自律の考え方や論理的思考、批判的思考についての理解を通し、態度の面でも思考の面でも大学生になってほしいと考えています。

取り組みの効果・今後の展望を教えてください。

 プログラムの終了後には、学生に「教材のわかりやすさ」「教材の難易度」「大学で学ぶことのイメージの形成」の3点でアンケートを実施しました。結果は以下のグラフで示した通りで、概ね手ごたえを感じています。例えば「教材の難易度」については、「やや難しかった」と感じてもらうことで学生の学習意欲を高めることをねらいとしていたため、適切な難易度の教材を提供できたと考えています。また、UNIPAからコース学習の達成度を抜き出し、入学前教育プログラムの受講が入学後の勉学にどのような影響をもたらしたかについても検証を行いました。その結果、コース学習の達成度が高い学生ほど入学後の春学期のGPAが高いという相関が見られました。ただ、全体の相関係数をもとにした算出結果からは、0.32という弱い相関しか見られず、どうすれば学生の学習成果に結びつくような入学前教育が行えるかについては、今後も改善が必要です。

 

 

 

 UNIPAを活用した入学前教育プログラムのメリットは、対象者や実施時期を柔軟に設定できること、UNIPAユーザであればコンテンツを準備するだけで無料でプログラムを実施できること、大学の教育方針に合わせた内容の決定や状況に応じたコンテンツの追加が可能であること等が挙げられます。一番のメリットは、学習の進捗状況やアンケート結果等、必要なデータをすぐに取り出せることです。また、大学側としては一度実施したプログラムを翌年以降繰り返し実施できる点、学生側としては入学前にシステムに慣れることができる点も、メリットと考えています。デメリットとしては大学側で準備したシステムを利用するため、自前でコンテンツを準備しなければならず、課題のフィードバック等も大学主体で進める必要がある点で、労力と一定の予算の確保が必要になることが挙げられます。その他にも、オンデマンド受講は学生に対して自律性や時間管理能力を求めるものとなるため、受講率という面ではまだ課題が残っています。

 

 今後は受講率向上のために、入学予定者への周知の徹底や、受講メリットの広報を考えています。加えて、学生の受講モチベーションが高まる魅力的な教材の開発や、プログラムの構築も必須と認識しています。まだ検討段階ではありますが、本学の入学前教育プログラムでは大学で必要となるスキル、入学初年次で学ぶべき内容を含めているという観点から、しっかりと学習成果を測る仕組みを構築できれば、単位として認定することも考えています。また、体制強化の面では学生スタッフの活用、データ活用の面ではBIツール導入によるデータ分析も、今後の展望として考えています。

 

 入学前教育は高大接続の一つの大きなツールとして機能し、かつ大学教育の質保証が図ることができるものだと考えています。本学ではさらにプログラムに改善を加え、入学前教育を継続していきます。

 

 

※本事例は2022年10月にご講演いただきました事例内容をもとに作成しております。